第三章 32式太極剣
一、剣の基本知識
(一)古代の剣(剣器)について
中国の剣の歴史は悠久であり、科学的な鑑定によって博物館において収蔵されている商代の”人頭紋青銅剣”が現在までにすでに3千年余りの歴史を有しており、唐代になると剣の形と構造が基本的に固定した。剣の(剣器)の広がりは剣術運動の発展を推進し、同時に剣術理論の完全性と向上性をも促進した。春秋戦国時代の時期には越女(越『今の折江省(さんずい)』の女性剣術家)が剣に精通しているばかりでなく、かつ彼女の剣術理論を特に奥深く、動と静、快と慢、攻と守、虚と実、内と外、順と逆などの矛盾の弁証法的関係について詳しく述べているから当時の剣術のレベルはすでに相当の程度まで発展していたことが解る。秦、漢、三国時代には一つの統一された多民族の封建王国が、建立されると武術をして政治、経済、文化の繁栄、安定の条件の下、”剣舞””刀舞”などの舞練の形式を出現させた。唐代に至ると剣術はしだいに軍事の実用性から離れて套路技術に向かって迅速に発展していったことが”公孫大娘舞剣”の記録から説明できる。明、清の時代は武術の全盛時代で剣器の外にも十八般兵器があり、今に至るまでずっと発展している。古剣(古代剣器)の構造は鋒(切っ先)が有り、鍔(刃)があり、背(剣背)があり、鋲(剣の柄)があり、?(剣首)がある。
皆さんにさらに分っていただくために古剣の構成名称と現代における剣の構成名称の変化を以下に対比して説明する。
次のとおりである。
古剣の名称 現代の剣の名称
剣鋒-----------鋭(鋭い)-------------------- 剣?(先)
鍔 -----------利(良く切れる)----------------剣?(刃)
背?----干(主要部分)、剣身の中の隆起している線---剣背?(背)
鋏-------------------------------------------剣柄(剣の柄)
縹(金偏)------------------------------------剣の柄の末端の付加してい る環状の部品(柄頭)
古剣の制剣の長さの区分に関しては、剣身が剣柄の五倍とするのを上制剣とし、上士(曹長レベル)が楓帯(イ偏)(帯びる)する。剣身が剣柄の4倍とするのを中制剣として中士(軍曹レベル)が楓帯する。剣身が剣柄の三倍の長さを下制剣とし下士(伍長レベル)が楓帯する。 一般に嶮柄の長さは五寸(約16,5cm)とし、以上三種類の剣の長さの区別は応じて三尺(約1m)、2.5尺(約82.5cm)、2尺(約66cm)である。 古剣の制剣の重さの区別に関しては、重九鏘?、重七鏘、重五鏘となっている。”鏘”は昔の重さの単位でおよそ六両になる。 それでは上制の剣が重さが3斤8両くらい(約1.9kg)、中制剣は重さが2斤7両くらい(約1.35kg)、下制剣の重さは約2斤(約1kg)となる。現在では一般の製造で剣の長さは1m位、重さは2斤(約1kg)以下である。
丁度剣の長さが3尺とみなす理由で古い剣の別名を”3尺”といい、だから「漢書。高帝記」に”吾以布衣提三尺、取天下”(われら平民を用いて三尺を提げて天下を取る)、洪秀全の「剣詩」の中に”手提三尺定山河”(三尺を手で提げて山河(国の事)を定める)の記録が有るなど、当時剣が軍事上の作用及び社会上の多方面に応用されていたことが解る。
(二) 32式太極剣の概述
この剣の套路は伝統楊式太極剣に基づいて套路を改編したものである。全部の動作は”起勢”と”収勢”を除いて、全部で32の主要な姿勢と動作を選定した。套路全体は4段(組)と各段(組)8つの動作とに分けられ、起勢から収勢まで全部で2回往復する(四段)。練習時間は大体三分間位を必要とする。動作の中には抽(抜き出す)、帯(引き連れる)、撩(切り上げる)、刺(突き刺す)、撃(打つ)、掛(引っ掛ける)、点(点を打つ)、?(切り降ろす)、裁(断ち切る)、托(支え上げる)、掃(切り払う)、欄(遮る)、抹(ぬぐう)などの主要な剣法と各種の身法と歩法を含んでいる。1人で独立して練習でき、集体での練習もできる。これら主要な姿勢と動作の練習を通じてますます良く体質を強化できる上に、また練習者の鍛練の興味を増加することができ、修身養性(身を修め、性質を養う)を以て益寿延年(寿命を延ばす)の目的に到達できる。
二、主要な剣法および規格の説明
32式太極剣の主要な剣法には点剣、刺剣、掃剣、帯剣、?剣、裁剣、棒剣、撩剣、欄剣、桂剣、抹剣などがある。
(一)剣法の規格と要求
1、点剣
剣を立てて首を提げ、剣先を上から前下に向かって打ち(点撃)、腕を自然にまっすぐ伸ばし力は剣先下の切っ先に達する。
2、刺剣
剣を立てる、あるいは剣を平らにし前に向かってまっすぐ出して刺とし、腕と剣が一直線となる。平刺剣は剣先が胸と平らにし、上刺剣は剣先の高さが頭と同じ高さ、下刺剣は剣先が膝と同じ高さ、探刺剣は腕を内旋し、手のひらが外を向き、剣が肩の上側を経て前上方に向けて剣を立て刺しだす。
3、掃剣
剣を平らにし(剣は水平になる)、左(または右)に向かって平らに振る。振る幅の大きさは90度で剣の高さは腰を越えず、”勁力(力)は剣の刃を貫く。
4、帯剣
剣を平らにし、前から左(または右)に向かって腕を曲げて引き抜くように廻してきて帯(引き連れる)とする。手首は胸の高さを越えず、剣先は斜め前を向き、勁力は剣身の中、後部を貫く。
5、?剣
剣を立て上から下に向かって?(振り降ろす)とし、力は剣身に達し、倫?剣は一回立円に振り回し、それから前方下に”?”する。
6、裁剣
剣身を斜め上向き、あるいは斜め下向きの裁?(断ち切る)とし、勁力は剣身の前に達する。上裁剣は斜め上向きに、下裁剣は斜め下向きに行う。
7、棒剣
両手の手のひらを廻し上向きに翻し、両側から胸の前に互いに合わせ、左手の剣指を右手の甲の下と共に持ち上げ、剣先は前を向き、おおよそ手首の高さにする。
8、撩剣
剣を立て下から上方に向けて撩(切り上げる)とし、勁は剣の刃の前方部に達し、正撩剣は前腕を外旋(外に翻す)し、手のひらを上に向け、身体に近付け、孤形に切り上げ、反撩剣は前腕を内旋(内に翻す)し、手のひらを下に向け、身体に近付け孤形にに切り上げる。
9、欄剣
左(右)欄剣;剣を立て腕を内旋(又は外旋)し、左下(または右下)から右前方(又は左前方)に向かって?りながら出す。手首は頭と同じ高さで、剣先は左(又は右)前下に向け、勁力は剣の前方部の刃の部分を貫く。
10、桂剣
剣を立て剣先を前から下に向けて同じ側、あるいは違う側に向かい、身体に近付けて後方に向かって引っ掛けるように出して、勁力は剣身の前方部を貫く。
11、抹剣
剣を平らにし、剣を一方の脇から身体の前を経て孤形にもう一方の脇の方に廻して引き抜いて抹(拭う)とし、高さは胸と腹の間で勁力は剣身を貫く。
(二)指法(手法)、握法(握り方)
太極剣の手型は主に剣指である。中指と人指し指を真直ぐに伸ばしてまとめて一緒にして残りの三指は手の内に曲げる。親指で薬指と小指の第一関節の上を押さえる。
太極剣の手法は剣を握る方法も指し、一般には2種類の剣の握り方の方法が有る。
1、持剣(剣の持ち方)
手の内を護手(剣身と剣柄の間の部分)にぴったりとくっつけ、人指し指を剣柄にくっつけて、親指とその他の指は護手にしっかり掛けて剣背を軽く腕の後側につける。
2、握剣(剣の握り方)
・正握
剣を立て(刃を上と下に向ける)小指側が下の刃の方に来る。
・反握
剣を立て、小指側が上の刃の方にくる。
・俯握
剣を平らにして(刃を左と右に向ける)手のひらを下に向ける。
・仰握
剣を平らにして手のひらを上に向ける。
剣を握る時には注意しなければならないこと:
第一に手首を緩めて指を固めず、手の内は空ける。
第二に剣を握るには親指、人指し指、小指は協調させ、動作の変化に従い、敏捷に把握し、時に握り、時に緩め、その自然のままに従って行く。
三、動作名称および分解動作の提示
予備動作
(一)予備式
1、並歩持剣
2、開立持剣
(二)起勢
1、両辟平挙
2、屈樽挙指
3、弓歩前指
4、上歩穿柄
5、弓歩接剣
第一段
(一)並歩点剣
(二)独立反詩刺
1、撤歩抽剣
2、丁歩上挑
3、独立反刺
(三)僕歩横掃
1、落歩劈刺
2、僕歩横掃
(四)向右平帯
1、収脚送剣
2、上歩翻剣
3、弓歩右帯
(五)向左平帯
1、収脚送剣
2、上歩翻剣
3、弓歩左帯
(六)独立倫劈
1、収脚翻剣
2、独立倫劈
(七)独立回抽
(八)独立上刺
1、転身進歩
2、独立上刺
(九)虚歩下截
(十)左弓歩刺
1、撤歩送剣
2、活歩卷剣
3、弓歩平刺
第二段
(十一)転身斜帯
1、提膝収剣
2、弓歩斜帯
(十二)縮身斜帯
1、活歩挿指
2、撤歩斜帯
(十三)提膝棒剣
1、撤歩分手
2、提膝棒剣
(十四)跳歩平刺
1、落脚収剣
2、登地刺剣(足)
3、跳歩収剣
4、弓歩平市刺
(十五)左虚歩撩
1、収脚罷剣(手)
2、左虚歩撩
(十六)右弓歩撩
1、転身堯剣(糸)
2、弓歩撩剣
第三段
(十七)転身回抽
1、転身引剣
2、弓歩?剣
3、虚歩前指
(十八)並歩平刺
(十九)左弓歩欄
1、転身抽拳
2、左弓歩欄
(二十)右弓歩欄
(二十一)左弓歩欄
(二十二)進歩反刺
1、蓋歩後刺
2、弓歩反刺
第4段
(二十三)反身回?
(二十四)虚歩点剣
(二十五)独立平托
1、叉歩堯(糸)剣
2、独立平托
(二十六)弓歩桂(手)劈
1、落歩桂(手)剣
2、弓歩劈剣
(二十七)虚歩倫(手)劈
1、転身反撩
2、虚歩劈剣
(二十八)撤歩反撃
(二十九)進歩平刺
1、提膝収剣
2、弓歩平刺
(三十)丁歩回抽
(三十一)旋転平抹
1、罷(手)脚横剣
2、扣脚平抹
3、撤歩分手
(三十二)弓歩直刺
収勢
1、転身抽剣
2、接剣開立
3、並歩持剣
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