ダグラス・ラミスさんの講演会
2002.02.11ヴェルクよこすか 戦争と星条旗・日の丸―作られる愛国心が導くもの


Photo & Report by K.Morita

おもしろい話でした。あらゆる方向、考えられうる地点、そしてながれていく時間、タイミング、立場、歴史、文化、思い付くことをはしから考えてみれば見えなかったものが見えてくる、というごく当たり前な事なだけど、目の前で展開していくラミスさんの話に僕はちょっとスリルを感じていました。

「罪」「愛」「楽」「感謝」「嘘」「影」「土」とわかりやすい言葉を組み合わせてややこしい話をわりあいシンプルに説明してしまうのは「ああ、そうなのね」と、ちょっと肩すかしを食ってしまうようなところもあるけれど、わからない言葉でわかりきった事を長々と説明している人が多い中で、こういうのはいいのでないかと思います。

なにより“気づく”こと。そこから先へ考えていける足がかりを見つけ
られる事。大切なのはそのへんなのだな、と僕は考えていました。
たずねる事で本当の事はわからない。つらくても「考える」「見る」事を
やめてはいけないのだな、と。


小林さおり@万 文化教室です。ラミスさんの講演録,やっとまとめました。同じテーマが繰り返されているので,時系列でなく,テーマ毎にまとめました。

ダグラス・ラミス講演会 2002年2月11日 ヴェルクよこすか

戦争と星条旗・日の丸―作られる愛国心が導くもの

☆愛国心に伴う罪悪感

愛国心が侵略に結びついた過去のある国では,常に愛国心という言葉に反発・罪悪感がつきまとう。愛国心が海外で人を殺す原動力になり,差別に結びついた→日米の共通点

☆愛国心が自己欺瞞に変わるとき

自分の国に欠点は一つもないと信じる→歴史をありのままに見られなくなる→歴史を神話に変える(米国でもスミソニアン博物館のヒロシマ・ナガサキ展の中止など,同じ構造がある)

☆国へダメージを与える現実離れの愛国心

非現実的な“大和魂”。日本は負けないという神話。今のアメリカの右翼・職業軍人も,同様の非現実的愛国心に縛られている。テロリズムに対する戦争を終わらせる方法・勝つ方法はない。ベトナムの教訓が,なぜ生かされないのか?

☆自然発生的愛国心

自分の住む土地を愛するのは,自然な感情。ドイツ文学に出てくる愛国心の原型は,都会へ出て帰ってくる,谷間の村。谷間を国家にすり替える,危険な国家の魔術。国家はイメージのない抽象概念なので、国旗・国歌によってイメージを作り出す。

☆“国家”という抽象概念を愛せるのか?

一つの答えとして:現実を見ない愛国心を持つと,自分の考え・行動に責任を持たなくてよいから楽。すべて国家に任せればよくなる。大人が子供化する。国家への感謝が愛国心に変わる。

☆戦争に反対するものは,愛国心を諦めねばならないのか?

反戦・平和活動家のほとんどは、隠れ愛国主義者。自分の政府を批判する人は,ありのままの国の姿を知っても,崩れない強さがある。現状は,愛国心を抑えなければならない不自然な状況。

憲法9条を守ろうとする人は,良い意味での愛国者。エコロジー運動に携わる人たちも,自分たちの“Land”(土地・くに)を守ろうとしている。乱開発をする企業・役人こそ,愛国心が足りない。

☆君が代を強制的に「歌わせる」ことは可能か?

美空ひばりは生前,「心から歌わない人は尊敬しない」と語っていた。歌の本質とは,そういうもの。強制されて出てくるのは,歌ではなく叫び声。強制によって植え付けられるのは,愛国心でなく「恐国心」。

教師の立場は苦しい。主権在民を教えている社会科の先生が,卒業式で君が代を歌えば,子供には大変なインパクト。自分の考えと行動を別々にしなければいけないという教育,最終的に国に従いさえすればよいという発想を植え付けられる。

☆テロは犯罪,戦争ではない

「これは戦争だ」とブッシュは叫んだ。戦争になれば,有罪判決が出なくても,証拠がなくても容疑者を殺せる。キューバのグアンタナモ基地へ移送された三百数十人は,捕虜としての扱いも受けられず、軍事法廷にかけられる。軍事法廷では,三人の職業軍人が判事となり,非公開で,自分の弁護士を自分で選任することも不可能。証拠に国家機密が含まれていると、被疑者と弁護士にはそれを見せない。

☆テロリストは“人種”なのか?

アメリカの政治家は,テロリストをevil(悪)という宗教用語で呼ぶ。これは悪魔の代理という意味。アメリカの新聞の漫画には,テロリストはどぶねずみとして描かれ、ばい菌と同様に「根絶」「撲滅」せよと言われる。昔の人種差別に、非常に似てきた。テロリストは殺すしかない、という思想は,ナチスと一緒。芯から悪という人間はいない。

☆アメリカは自分自身の影を踏もうとしている

アメリカ政府とマスコミが,テロリズムを使う人々に被せる“テロリスト”という仮面は,アメリカの共通潜在意識、罪の意識の投射(フロイトの精神分析用語)。米国は,自分が帝国を持っていることを否定する,初めての帝国主義国家。テロリストの供給にはきりがない。愛国心がノイローゼに転化し,大きくなるばかり。

☆Q&Aコーナー

Q1 民主主義のアメリカが,なぜいとも簡単に,軍国主義一色に染まったのか?ジャーナリストは何をしているのか?

A1 米国のマスコミは混乱している。30年代の日本と似ている点/ 異なる点がある。思想・出版の自由はまだある。テロリストの容 疑者は全米に1,000人近くいるが,彼らは軍事裁判にかけられる可 能性がある。反戦運動は,カリフォルニア,バークレーでは当たり 前だが、他の地域ではないこともある。新聞は注意して読まない と,プロパガンダを刷り込まれる(昨日,先月の新聞を読み返す, 小さな記事に注目する、記事間の矛盾を探すなどの作業が必要)。

 世論調査について:戦争が始まると,最初に必ず支持する結果が出る。一旦戦争が始まってしまうと,誰しも自分の軍隊には負けて欲しくない。意図的な質問の仕方、「アフガニスタンへの核攻撃は効果的か?」→Yesと答えた人は,核攻撃を支持することにされてしまう。

Q2 戦争には,ビジネスとしての側面もあるのでは?

A2 負ける戦争は,良い商売ではない。敵を宗教用語で「悪」と呼べば, その時点で戦争は聖なる戦争,アメリカのジハードになってしまう。

Q3 健全な愛国心を取り戻すにはどうすればよいか?

A3 とりあえず「くに」という言葉を元のイメージに戻し,横須賀市民は愛市主義者になってはどうか。日本では,罪の意識が伴わない愛国心は,沖縄と東北の一部(関東への抵抗を行った地域)にしか存在しえない。江戸っ子は江戸を愛すれば,中央政府への抵抗になるのでは?

☆講演後のデモ報告

講演会終了後,三教組(三浦半島教職員組合)の方々に混じり,会場から横須賀中央駅の前を通り,米軍基地に立ち寄り,汐入駅までデモ行進をしました。基地へ向かう大通りで,米軍人の子どもと思しきローティーンの少女たちが4,5人,米国歌をがなりたてながら付きまとって、嫌がらせをしてきました。そのやかましいこと、この上なし。アメリカ国内で,反戦活動をしている人の苦労がしのばれました。

ラミスさんは,デモ隊の先頭に立って歩いていましたが,米軍基地の正面まで来ると,立ち止まってハンドマイクを握り,基地の前に立っている,制服姿の兵士たちに向かって呼びかけました(内容は省略)。汐入駅前で,参加者は一堂に会し,ラミスさんのご苦労をねぎらって,解散となりました。


ビデオ 横須賀基地前にてダグラス・ラミスさんのアピール 2min